【愛の代償(第2話)】結婚の話なんて……しなければよかったのかも??

【愛の代償(第2話)】結婚の話なんて……しなければよかったのかも??

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「はぁ……」

バーからの帰り道、私は駅で浜本さんと別れた。
終電までまだ時間はあるというのに、今日のデートが終わってしまったから。

(結婚の話なんて……しなければよかったのかも)
後悔のため息が、止まらない。

浜本さんに、伝えた私の気持ち。
そうしたら、やっぱりいつものようにはぐらかされてしまった。「仕事が忙しいから」「僕だっていつかは君と結婚したい」そんな言葉を並べられて、私は押し黙るしかなくて。

彼に、重い女だって思われるのが嫌でこれ以上が踏み出せない。気持ちばかり焦っても仕方がないことは自分でも理解してる。

だけど、どうせなら20代のうちにウエディングドレスだって着たい。両親を早く安心させたい。地元の友達みたいに子育てだってしたい。

考えれば考える程、欲望ばかりが募ってしまう。

「はぁ……」

相変わらず止まらないため息のまま、駅の階段を昇る。

浜本さんとは、いつも駅の改札でお別れ。それに対しての不満があるわけではないけれど、許される限りの時間を最大限に利用したいと思うのは、私のわがままなのかな。

もんもんとした気持ちのまま、昇る階段はひどく高く感じた。

――上京して五年。それから初めて出来た彼氏が浜本さん。

私の務める企業は、どうにも若い人が少なくて出会いなんて全然ない。ただ、入社した頃は……同期に憧れを抱いてた時期があった。増田涼介。

背が高くて、顔も整っていて、私以外の同期の女の子はもちろん、先輩女性社員もみんな増田くんのこと狙ってた。

でも、増田くんは仕事一筋で誰にもなびかなくて。そのうち、部署も別れて私の増田くんに対する気持ちは消えてた。

カラカラに乾いた、砂漠みたいな心でそれからは仕事に打ち込んで……それで浜本さんと出会ったから余計かな。今まで付き合っていた人たちよりも、浜本さんの存在が愛おしく感じられるのは。

私より10歳近く上の浜本さんは、当然だけど私よりも仕事ができて、大人で、包容力がある人。
会える時間は少ないけれど、その分、こまめなメールや電話をかかさない。そんな気遣いも、嬉しかった。

(これで、結婚出来れば何も文句ないんだけど……)
曇らせた顔のまま、電光掲示板を見ようとホームを歩いた。電車が来るまで、あと5分はある。
と、ふいに私の隣に人がたった。

ガラガラのホームなのに。

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