【愛の代償(第1話)】ホテルに誘われる私・・・。

【愛の代償(第1話)】ホテルに誘われる私・・・。

愛の代償の重さなんて、私は知らなかった。

知ろうとも、しなかった。

もし、知っていたら……私は幸せな恋が出来たのかな?

夜景の見えるレストラン、おしゃれなジャズが流れるバー。

彼とのデートはいつも、仕事が終わって終電までの短い時間。

だけど、それも仕方ない。彼、浜本和久さんはお仕事が忙しいのだから。

せっかくの休みは、私のために時間を使うより、体を休めてほしい。

浜本さんと知り合ったのは、三年前のこと。課長の代理で私、西脇真央が取引先に訪問したときのことだった。

そのとき、相手をしてくれたのが浜本さん。

それ以来、仕事でメールのやりとりをするようになって、いつしかプライベートなメールもやりとりするようになった。

私も、浜本さんも子供じゃない。男女の関係になるのに、そう時間はかからなかった。

「ねえ、真央ちゃん……もう、店出る?」

浜本さんが、グラス片手に私の手に自身の指先を絡めた。お酒のせいか、熱を感じるそれに応えるように私も指を動かす。

この仕草がある日は決まってホテルに誘われる。

別にそれが嫌なわけではないのだけれど、私も……そろそろいい年だ。いつまでも、こんな付き合いを続けてはいられない。

(もうそろそろ、結婚の話題を出してくれたっていいのに)

そんな気持ちが出れば思わずうつむいてしまう。何度か、私から結婚について触れたことがあったけど……その度に言葉を濁されていた。

今すぐ答えがほしいわけじゃない。だけど、不安なんだ。このまま、こうやって、ずっとずっと……平日の夜にしかデート出来ないままなのかって。

食事をして、体を重ねて、それでバイバイなのかなって。

若い頃ならそれでも良かったんだと思う。でも、私だって結婚に憧れる。浜本さんと家庭を築きたい。望めるなら、子供だって。

「浜本さん、もう少しお話してからでもよくありません?」

愛読してる雑誌には、『結婚にがっつく女は嫌われる』なんて書いてあったから、私から結婚の話題はなるべく出さないようにはしていた。

だけど……私が言わなかったらきっといつまでもこのままなんだよね。

絡めた指先に力をこめ、浜本さんへと顔を向けた。

――今日こそは……。

⇒第2話へ

banner
↑こちらのタイトルの目次は此方へ
banner
↑その他のタイトルは此方へ