考えがまとまらないままに、浜本さんと会ってしまった。
彼は昨日と同じ笑顔を見せて……その笑顔が余計に私を混乱させる。
いつものバーカウンターで、他愛の無い会話。
そうして、絡まる指先。
何も考えられなくて、私たちはホテルへと向かった。
体を重ねるのは、ラブホテルじゃない。決まって、ビジネスホテル。
浜本さんは「ラブホテルが苦手だから」そんなことを言っていた。
今日も例外なく、ビジネスホテルに出張のサラリーマンを装ってチェックインする。
私もそれにあわせて、フロントをなんなくやり過ごす。
「真央ちゃん、先にシャワー浴びておいでよ」
「え? あ……」
いつもと一緒。ホテルの部屋に入れば私がシャワーを先に浴びる。
その行動に疑問を感じたことなんてなかった。3年間そうして来たのだから。
それなのに……今日はシャワーへ向かう気にはなれなくて……。
(増田くんのせいだ……なんで、あんなこと言うの……)
「真央ちゃん? どうしたの?」
「あ……た、たまには浜本さんが先にシャワー浴びたらどうですか?」
「えー? じゃあ、今日は一緒に浴びる?」
バーでのアルコールのせいか、浜本さんはご機嫌に私の肩を抱いた。
その行動を素直に喜べないのも増田くんのせい。
(聞かないとだよね……こんな気持ちのままいるのは嫌だし)
「あの、浜本さん……」
「なに?」
「お聞きしたいことが……」
「んー? どうしたの? 話なら、ベッドでさ」
「あっ!」
浜本さんと共にベッドへなだれ込む。
そうすれば私を包み込むように抱きしめ、野獣のように荒々しい唇を押し付ける。
「今日、シャワーはいいかな? 昨日もお預けだったから我慢できないんだよね」
汗ばんだ浜本さんの体が、私に密着する。
それを、受け入れることも拒否することも出来ずにベッドへ寝ているだけの自分がいた。
(増田くんがあんなこと言わなければ、今夜だって楽しめたのに……)
浜本さんを受け入れるように瞳をとじるのだけれど、瞼の裏には増田くんの姿。
例えこれが不倫だとしても、彼には関係のないことなのに。
執拗に私たちの関係を止めようとしている増田くんの行動を疑問に感じる。
(そう言えば、結婚式の写真とか言ってたっけ……)
体に浜本さんの熱を感じながらボンヤリとそんなことを思い出した。
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