【笑える霊の話】恋人の死後、現れた恋人を名乗る女の幽霊は見たこともない美女【芦屋道顕】

【笑える霊の話】恋人の死後、現れた恋人を名乗る女の幽霊は見たこともない美女【芦屋道顕】

笑える霊の話、第二弾じゃ。近年に若くして亡くなったのは悲しいことではあるが、あの世でも達者で暮らしているようでなにより、と遺された側も少しばかり慰められた話。

第一弾はこちら↓
集中力がない人間が幽霊になると?

■若くして命を落としたのは大変な悲劇ではあるが

その女性の死因については、現在の世の中では例え苦しんで死に至ったとはいえ、本人の弱さや自己責任と考える人も多いゆえ、ここでは語らぬ。誰がどう思おうと、生前の本人はとても朗らかで明るく善良な女性であった。ゆえに誰かを恨むこともなく、本当に命の蝋燭の長さがそもそも短かく、静かにその炎が消えるようにこの世を早めに去ったのじゃ。

ただ、遺された恋人は当然のことながらひどく悲しみ、仕事も手につかず家にこもるようになってしまった。毎夜、夢の中でだけでも逢いたいと願いながら床についていた。

そして、その念は肉体の死後、すぐにあの世で休めるはずであった女性の魂の後ろ髪を引いてこの世に留まらせてしまったのじゃ。

■自己認識が盛り過ぎで恋人に気付いてもらえぬ姿に

「集中力が足りずボケボケの姿しか現せない幽霊」もいる一方で、生前から集中力があり、なおかつ己の存在をアピールしたくてたまらなかった人間は死後もやはりそのような幽霊となる。

この女性がそうであったようで、夜な夜な悲しみ「愛してるよ。夢に出てきて」と呟く恋人の元に、完璧な姿で現れたそうじゃ。

寝入りばな、男は生前の彼女が彼を呼んでいた愛称で優しく呼びかける声を聞き、目を開けた。すると、ベッドのすぐそばにとても美しい女性が立っていた。女性は微笑んでいて、それが霊的な存在であることに瞬時に気付いたものの、少しも怖くなかったそうじゃ。

しかし。

「・・・誰?」

そこにいた女性は彼がこれまで出逢ってきた女性の中でもっとも小顔で目がパッチリとしたとてつもない美女だった。(・・・こんな知り合いはいないぞ。でも、彼女のことを考えていたら出てきたんだから、ということは彼女の守護天使が彼女の代わりに来てくれたのかな?)と、本気で思ったそうじゃ。それが読み取れたようで、その美女は笑顔のまま、

「天使だなんて(笑)私だよ。◯◯だよ」

と答えたという。男は愛する彼女が現れてくれたことを嬉しく思いつつ(どういうことだ?記憶が美化されてる?俺の妄想?あ、夢?)と困惑した。それにまた気付いた美女は、

「美化してないよ。前からこの顔だよ!もう忘れたの?」

と、答えて男をさらに困惑させた。(いや、面影はあるけど、こんなアイドルみたいな小顔じゃなかったし。俺が付き合ってたの彼女は……。ああ、でもあの世では自分の理想の姿になれるとか聞いたことがあるから、そういうことか)

美化

男は何とか自分で気持ちに折り合いをつけ、目の前の美女と記憶の彼女を結びつけて彼女への愛を伝え、彼女からは「あなたはもう、引きこもるのはやめて、前を向いて。ほかに素敵な人を見つけて幸せになってね」といった温かなメッセージを受け取ったそうじゃ。

その翌日から気力を取り戻した男はまたきちんと社会生活を送り始めた。しばらくして男は、彼女の家族から、彼女の遺骨の納骨式に呼ばれた。笑顔の遺影が霊園の控え室に飾られていて、それは男が記憶する彼女の顔だったという。

それからも男は彼女のことを忘れきれず、一緒に撮った写真やネットのアルバムを時々見返して懐かしんでいたが、ふと思いついて、検索サイトに彼女の名前を入れてみた。

すると、生前の彼女は「やってない」と言っていたあるSNSのアカウントが見つかった。比較的珍しい名前で同姓同名がほとんどおらず、住んでいる地域も一致したので彼女のアカウントで間違いなかった。

知り合い以外は投稿内容は見られなかったものの、プロフィール画像を含めて何枚かの画像が閲覧できた。いずれも自撮り画像ではあったが、男の生前知っていた本当の彼女とはずいぶんと異なっていた。(めちゃくちゃ盛りまくりだなぁ)

けれど、徹底的な美顔加工が施されたその画像の美女にも見覚えはあった。あの夜、彼の元に姿を現した美女だったそうじゃ。

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