【怪談】バラバラ事件⑵呪われた村の悲しい犠牲【芦屋道顕】

【怪談】バラバラ事件⑵呪われた村の悲しい犠牲【芦屋道顕】

【怪談】バラバラ事件⑵呪われた村の悲しい犠牲

⑴を先に読んでくだされ。バックナンバー↓
芦屋道顕の真夏の怪談(ベリーグッド)

⑴では現代に起きて発覚した話をしたが、今回はすでに滅びたりある村で行われていた儀式によるバラバラ殺人事件の話。

■人が住んではいけない土地にできた村

呪われた村

その村は険しい山に囲まれた谷間にあり元々大雨の後の土砂崩れや谷間を流れる川の氾濫で人が住むには適さない土地にあった。さらに、その谷間に人間が足を踏み入れると祟りがあるとの噂もあった。谷間に棲みつく人外のものがいて、その怒りを買うのだと。谷間に迷い込んだ狩人や旅の法師が消息不明になり、しばらく後に変わり果てた姿で……。大型の獣に食い荒らされたような死体が下流に流れ着くことが何度かあったそうじゃ。

そのようなところに一体なぜ村が出来たのかは定かではない。しかし、一説では別の離れた地域で起きた大きな戦で負けた側の一族と、その一族が治めていた村の人々が落ち延びてきたと言われていた。勝った側の一族が牽制を振うていたので、彼らは他に行き場がなかったのじゃな。逃げる彼らを勝者側の兵が追っても、彼らが谷間に分け入るのを見て「この先は禁足地。踏み入れれば祟りがある。あいつらは放っておけ」と諦めて引きあげた。しかし、勝者側は彼らが谷間から里に出てくると、見つけ次第殺すと決めて常に彼らの村を見張っていた。

■谷間の災いの主が要求したこととは

谷間にも多少の耕作地はあり、山の獣を狩り川の魚を獲ることもできた。しかし、たびたびの大雨で耕作地にも村にも土砂が流れ込み川も氾濫し、そのたびに村人の命が奪われた。それだけならばまだしも、親や周囲がほんの少し目を離した隙に村の子供が拐われ、後日に変わり果てた姿で川縁に横たわっているか、川中の岩に打ち上げられているかという惨たらしい出来事がたびたび起きた。

このままでは村人達は安心して子供を産み育てられず、やがてどの血筋も絶えてしまう。かといって、里には降りられない。ここへ来ることになった原因の一族の家に村人達は集まり、何度も話し合いをしたが結論は出なかった。しかしまた、村の子供が誰も目を離していなかったのに自ら駆け出して川に入り姿を消し、夕刻にやはり惨たらしい姿で見つかった。

その日の夜、村人達はついに得体の知れぬ何者かと対峙することにした。暗闇の中、松明を手に皆が子供の遺体が打ち上げられていた川辺に集い、出てこいと叫ぶと、川底から何やら声がした。

「おまえはどうして人間を喰らうのか。どうしたらやめてくれるのか」「お前たちもこの山川の命を喰らうて、感謝もせずにいる。私も生きるためにお前達を喰らうているだけだ。嫌なら出て行け」「私たちはここから出られない。里の者に見つかれば容赦なく殺されてしまうから、ここにいるしかないのだ」

すると、声の主は言った。「では、里の者がいなくなれば、お前たちは里に戻るのだな?ならば、里の者を全て追いやり、お前たちが戻れるようにしてやろう。その代わりに、村の主、おまえの長男を喰らわせろ。明日の夜明け前に川岸に連れてこい」

恐ろしい条件だったが、里に戻れると聞いて村人達はその条件を喜んだ。ここに逃げ落ちた責任は、かつて戦を始めた一族にある。その長男を差し出すのは辛い決断ではあろうが、当然の犠牲だと、皆思った。一族の主も皆がそう思っていて断れないことを悟り「分かった。長男を連れてくる」と答えて、村に戻った。

■村八分から生贄を選んだ一族の末路

しかし、一族の主はやはり愛しい我が子を化け物に喰らわせるなど考えもできず、考えてもいなかった。「要は、長男ならばいいのだろう。我が子でなくとも、ばれるまい」当時はどの村にも文字通り「村八分」となっている家が一軒や二軒はあった。この村でも、人々の嫌がる仕事を引き受け、狭い谷間でもぽつりと離れた場所にみすぼらしいあばら屋があり、そこにもうなぜ村八分となったのか由来は誰も知らない母子が慎ましく暮らしていた。父親はすでに他界していて、非力な母親は村の主に小さな一人息子を連れ去られ、さらに「このことを口外したらどうなるか分かっているだろうな」と脅されても、抵抗も出来なかった。

村の主は他の村人にも口裏合わせを頼み、偽の長男を川岸に連れて行った。「息子を連れてきた。さっさと喰らうがいい。約束は守ったぞ。今度はおまえも約束を守れ」村の主が川に向かって叫ぶと、次の瞬間、村八分の家の小さな息子が悲鳴をあげた。夜明け前の暗闇ではっきりとは分からないが、何か大きな黒い蛇のようなものが川から現れ、その子供の身体に巻きついて、川底に引きずり込んでしまった。

続く。

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