2015年5月23日、実写化不可能と言われた恋愛小説『イニシエーション・ラブ』がついに劇場公開されます。
松田翔太、前田敦子のダブル主演という形をとっているようです。
キャッチコピーは「最後の5分全てが覆る。あなたは必ず2回観る。」と謳っています。
一方小説は「最後の2行で物語は変貌。必ず2回読みたくなる。」と評された傑作。
一体この小説のトリックを、どう映像で表現するのか?
この本に魅了された読者としては、映像には期待よりも不安が勝る印象です。
ストーリーは「僕」こと大学生・鈴木夕樹が、代打で出た合コンで歯科衛生士・マユと出会うことから始まります。
ふたりはやがて恋に落ち、付き合うことに。
マユは”夕樹”の文字から一文字取って「僕」を”たっちゃん”と呼ぶようになり、とても順調な交際を続けます。
マユと”たっちゃん”は・・・
この短い説明文でやたらと「 」や” ”を多用することに苛立ったあなた。
『イニシエーション・ラブ』にはその観点が大切です。
そして、全貌を説明したい気持ちは山々なのですが、これ以上内容に踏み込むことは許されません。
これも『イニシエーション・ラブ』たるところなのです。
理由は次ページから述べていきます。
まず秘密を少し暴いてしまうと、2004年発表当時、普遍的なカップルを軸に描いたと思われた恋愛小説は、最後の2行で完全にミステリー小説に変貌を遂げます。
読者が一様に感じるであろうすっと冷気が背筋を通るような読後感。
文字だけで描くドラマだからこそ味わえる、悔しいまでの裏切りは、読者の想像力で完成するトリックの神髄と言えるでしょう。
そう、この小説は”読者の想像力”がなくては楽しめない、いわば”恋愛脳テスト”の会場なのです。
メインのトリックは最後の2行で明かされるのですが、実はそれ自体は他に隠れているトリックの目くらましなのだと一部で話題になっています。
小説を読み慣れていて、なおかつミステリーのコアなファンに言わせると、「こんなのミステリーでもなんでもない!トリックだなんて言わせない!」なんてアンチな意見も聞こえてくるのですが、メインのトリックを知った後も解消されない違和感を追うと、更に微細な仕掛けがされていることに気付くのです。
一文一文よくよく読み込むと・・・確かに!
筆者もひとつ、ふたつと気づいたときには、文章だからこそ成せるそのトリックに、ますますのめりこんでしまいました。
こういうのを”叙述トリック”と呼ぶのだと思うのですが、アンチな方々は「こんなのを叙述トリックなんて言わないで!」なんてファンとの間で激論を交わしておられたので、筆者も声を大にするのは避けておきます・・・。
しかしこの仕掛けたちに気づいてしまうと、セリフひとつをとっても裏があったりで、前述したとおり内容を説明することが一切できなくなってしまったのです(汗)
ちょ~っと触れると、じわじわ来る違和感からたどり着く疑問、「一体この恋愛は誰の話なんだ?」というところにあります。
カップルの話なのに、恋愛しているのが誰なのかわからない・・・?
ん?これはどういう解釈になるんだ?
・・・なんて、あれ・これ・それじゃまったく伝わらないのは分かっているのですが、伝えてはならないからもどかしいのです。
紹介したくてたまらない一冊なのに、人物名はもとより、ストーリーの一説を取り出すことすらはばかられる奇妙な本なのです。
こんな情報ですらもなるべくなら入れてはいけないのですが、読んでもこの意味に気付かない人すらいるかもしれません。
世の男性を震撼させたヒロインと、勘のいい女性なら早い段階で気づく”彼”のこと・・・
ぜひ『イニシエーション・ラブ』を読み解いて、あなたの恋愛偏差値を試してみてください!