応用編:恋愛脳を切り替える特訓!叙述トリックを見破れ「GOTH」【ネタバレ有】

 
一度脳に刻んだ情報を修正するということは、
大変な労力を要する作業だと感じたことはありませんか?

ある事柄に対し最初に記憶された情報は、
脳に深く刻み込まれ、なかなか覆らない・・・

こうして起こるのが”思い込み”です。

一度「こうだ」と思ったことに対して、
他人にあれこれ言われても絶対に聞き入れない人を
”頑固”だとか”分からず屋”と言ったりしますね。

このような人方が「恋に盲目」になってしまった場合、
頑固だった反面、急に自我を保てなくなります。

そうなると悪い男に騙されたり、
最近話題の”モラハラ”を受けても気付けない傾向が考えられます。

なぜなら一度思い込んだら「自分が絶対」なので、
周囲の心配する声にも耳を貸さないからです。

ミステリー小説にはしばしば”叙述トリック”というものが使われます。

これは読者の”思い込み”を利用し、
話の構成をかき回す手法です。

今回ご紹介するのは、そんな手法が巧みに使われた作品です。
 

奇才・乙一『GOTH』に収録された『犬 Dog』
この作品で、ぜひご自分の”思い込み”の強さを測ってみてください。

前説として―『GOTH』の主人公は「僕」として語られています。
(一応あとから付けられた名前もありますが・・・)
そしてこの物語は「僕」の他に、”私”という視点でも描写されます。

 

 
「僕」の住む町内では、犬の連続連れ去り事件がもっぱらの話題でした。
今日もどこかの犬が消えるかもしれません。

 

一体犬たちはどこへ?

 

さすがに犬好きな誰かの犯行であったとしても、
自宅に囲うにしては少々多すぎるくらいの数が消えていました。

いくら室内に隠していても、ばれないわけはありません。

人間のGOTH(暗黒)な面に魅力を見出し強く惹かれる「僕」は、
猟奇殺人事件などの切抜きの収集が趣味です。

普段はいたって平凡な高校生を演じながらも、
殺人者に異常なまでの興味を抱いています。

以前起きた連続殺人事件では、まだ発見されていない変死体の情報をつかみ、
捜しにに行くなどしています。

その特異な性癖から、同じくGOTHな性質を持つ女友達(同志?)が連続殺人犯に殺される様を見届けようとした前科があったり・・・。
(未遂に終わります。)

 

 
ある日「僕」の妹が”あるもの”を見つけ、
気分が悪いとうなだれて帰ってきます。

妹に聞いた”あるもの”を確認しに、
橋の下へと足を運ぶ「僕」

長い雑草に隠れた大きな穴には、赤黒い塊が積み重なっていました。

”あるもの”とは、行方不明になっていた犬たちの、
変わり果てた姿です。

こんなとこにあったらまず見つけることはなさそうなものですが、
それを見つけてしまうのが妹なのです。

「僕」の妹はやたらと”死”に縁があるようで、
こういったものによく出くわします。

それゆえ、「僕」は妹をうらやましく感じるときもあるくらいでした。

一体この犯人は誰なんだろう?

殺”人”ではありませんが、
またしても犯人に興味を持つ「僕」

犯人は意外にも・・・
 

 
ママとユカと””。
3人で暮らす家に、”あの男”がやってくるようになりました。

ママが仕事でいない日中、
ユカは”あの男”に殴られ、蹴られます。

”私”はただおろおろとするばかりで何もできず、
うずくまるユカに駆け寄ることしかできません。

ユカは夜になると”私”に子犬を誘拐させます。
虐待されたストレスを晴らすために。

橋の下まで連れて行くと、”それ”はユカの合図で始まります。

 

やれ。

 

ユカの瞳が黒く光り、”私”は子犬の細い首に噛みつきます。

あごに響く鈍い骨の音。
何が起きたのか理解できないまま、”私”の口の中で動かなくなる子犬。

息絶えたそれをくわえたまま、
いつもの穴に放り込む”私”

ふと、誰かの気配を感じ、見回します。
しかし家へと急ぐユカに促され、河原を後にしました。

 

一部始終を見ていた「僕」は驚きます。
あの子が―・・・
 

 
残念ながら、お話できるのはココまでです。

最初に述べたとおりこの話を読み解くのには”思い込み”が鍵になっています。
あなたの頑固な”思い込み”をいかに開放するかで、今後の恋愛事情も変ってくるはずです。
読み終えて「え???」だったあなたの頑固指数は、かなりのパーセンテージを誇ると考えられます!

そんなあなたはもう一度、二度と読み返してください。

 

「なるほど!悔しい~!」

という感想まで行き着ければ、”頑固者”は返上!

鍛えた脳で、”思い込み”による
恋愛事故(?)も減らせるはずです♪