Qお化けは怖いけど恋が絡むと切なくてぐっとくる
暑くなると怖い話があちこちで特集されますが、怪談の多くに色恋がからんでいることに気づきます。
あんまり怖い話はそんなディテールは忘れて怖かった事だけ覚えていたりしますが、よく考えるとあの話すごく切ないっ!と後になってしみじみ感じることってありませんか?
今回はそんな恋愛と怖い幽霊がでてくる名作を、厳選して3つご紹介したいと思います。
Q愛情と生死を描いた永遠の名作「雨月物語」
しょっぱなから古典の紹介してしまいますが、「雨月物語」は時代を超えて愛される怪談といえる名作中の名作です。江戸時代後期の作品でありながら現代でも二次創作や現代語訳が出版され続けるロングセラー作品でもあります。
9編の怖い話からなる短編集なのですが、「浅茅が宿(あさじがやど)」では幽霊になっても待つ女の切なさと執念というか怨念が、しっとりと美しくも怖い空気感のなかに描かれています。
また「蛇性の淫(じゃせいのいん)」は蛇女にストーカーされて気づかずに結婚してしまう男の話。
ストーリーの面白さももちろん、幽霊たちの怖さ、そして強い思いと切ない結末が夏の読書にピッタリです。
Q愛おしすぎて死んでも死にきれない「ゴースト」
怖い怪談だけど実は切ない恋物語「雨月物語」の次にご紹介するのは、感動的な恋愛映画なのによく考えるとけっこいう怖い怪談という逆のパターンの名作映画です。
90年代に大ヒットした往年のハリウッド映画「ゴースト」は、ドタバタコメディーの要素もありながら日本人的ともいえるような心の機微をとらえる描写のある恋愛映画です。
暴漢におそわれ死んでしまった主人公が、霊媒体質の叔母ちゃんの力をかりて恋人のピンチをすくうという物語。と、まとめるとバブル期のハリウッド映画らしいSFコメディのようなディティールであるにもかかわらず、セリフのタイミングや音楽はもちろん、やはり役者の絶妙な表情によって観客を涙させるすごい映画です。
どんなにくさいセリフも、幽霊になるほどの強い想いには誰もが心を動かされてしまうものなのです。
全体を通してロマンチックな気分にさせてくれる映画ですが、後で考えるとホラーだよねってなるシーンが盛りだくさんです。すでに見たという人は一度ホラー映画の観点から見返してみるのも面白いかもしれません。
Q大人の情愛とジャパニーズホラー「ぼっけぇきょおてぇ」
最後は日本ホラー大賞受賞の本格的ジャパニーズホラー小説です。これは本当に怖いやつです。
タイトルの「ぼっけぇきょうてぇ」は岡山弁ですごく怖いという意味なのだとか。
恋愛というものは情念であり、それらは怨念も含んでいると改めて直視することになるおすすめの逸品。私は読んでいて怖くて買ったのを後悔しましたが、不思議とやめられない小説自体のおもしろさはさすがホラー大賞作品です。
以上3点ご紹介しました、夏の夜にはこんなお話で恐怖とキュンとする切なさを同時に感じてみるのも面白いかもしれませんよ。