完璧にしたい自分に恋が来た~映画『幸せのレシピ』~

完璧にしたい自分に恋が来た~映画『幸せのレシピ』~

 
1:自分の仕事は完璧であるべき
2:プライベートを優先させるなんて、もっての他
3:甘えを他に見せたくない
4:楽をしてるとソンをした気分になる
5:弱みは人に見せたくない
6:自分で決めたルールがある
7:泣くときはいつも一人

・・・これは、そんな貴方に送るラブ・ストーリー

仕事は完璧、でも中身は不器用な女性

ケイト(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)は、
NYでトップを争う人気を誇る高級レストラン
『ブリーカー22』の料理長。

ソツがなく、腕前も超一流で完璧主義だけど、愛想がない。
仕事にかける情熱は人一倍なのに、厨房の外のお客様に
挨拶の一つも出来ない。
 
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クレームが付こうものなら、お客との喧嘩も日常茶飯事。
今日も、ステーキの焼き加減を巡って客と大喧嘩。
見るに見かねた支配人のポーラ(パトリシア・クラークソン)は、
ケイトにカウンセリングを受ける様に勧める。

ケイトの生活を変える二人とは?

そんなケイトの『完璧』の牙城を壊すものが現れる。
9歳の姪のゾーイ(アビゲイル・ブレスリン)だった。

ケイトの唯一の理解者だった姉が事故で亡くなり、姉の娘である、
ゾーイを引き取る事になったケイト。

その日からケイトの完璧だったはずの日々は、めちゃくちゃに。

ゾーイはケイトの作った料理に見向きもせず、
寝坊したのに、赤のマフラーを忘れたら学校にいけないと、
だだをこねる始末。

しかもケイトの聖域である厨房には、新たに
スー・シェフ(副料理長)として雇われたニック
(アーロン・エッカート)がやりたい放題している。

ラジカセを持ち込み、大音響でクラッシックをかけ、
陽気に歌いながら、振るう料理の腕は、ケイトに負けず劣らず、
一流だとくるのだから。

そんなゾーイとニックの存在に、ケイトはイライラする。
 

 
料理=母親=自分なケイト

ケイトが頑なに自分のやり方を崩さないのには、
理由があります。

彼女は幼い頃に死んでしまった自分の母親から
料理を教わり料理に興味を持って、この道に行きました。

でも家庭に無関心な父、奔放な姉に挟まれた彼女にとって、

料理をけなされるのは自分だけでなく母親をけなされた事と同じ

映画の冒頭部分でも肉の焼き加減を何度も注文つける
嫌な客に肉の塊をそのままドンッ!と出してしまう
彼女の気持ちも、それなら判らないでもありません。
 
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そこまでできたらなぁ、でも出来ないよね、というのが
現職の料理人の本音だと思いますが。

そんな彼女に、もう一歩踏み出して成長させる
チャンスをくれるのがゾーイとニックなのです。

ニックの作ったものなら食べるゾーイの姿を見て、
ムっとくるケイトですが、ニックは
食べてくれる相手を思い作るから
当然の事なのですね。

それに対してケイトの料理は、本来は母親の愛であったはずが、
いつの間にか完璧にすれば周囲が喜ぶと思うようになっていた。

これは料理を食べてくれる人と料理人である自分との間に
壁を作ってるようなものなのです。

その証拠に、ゾーイはケイトと一緒に暮らしていても
居場所がないと家を飛び出し、母親のお墓の前に
行ってしまいます。

表向きはケイトを困らせていても、心のうちは寂しかったのが
判るシーンです。
 

 
トゥーランドットが意味するものは

ゾーイに心を開いて貰えなかった事がショックだったケイトに
ニックがティラミスを作るシーンが出てきます。

ケイトは、デザートは食べない主義なのですが、
自分の主義を破って彼のティラミスを食べるのです。

それからニックは、ケイトに自分の店を持つ勇気が出来たといい、
店を去る事に。

産休で休みをとっていたスーシェフが戻り
『ブリーカー22』には前のように、ケイトが仕切っていた雰囲気が
戻るのですが、ケイトは何か物足りなさを感じます。
 
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そして彼女はサンフランシスコで店を開くニックを追いかけ、
彼と店を開いて、映画はお開きとなります。

ニックが『ブリーカー22』に配属されてきた時に、
ラジカセを持ち込んでまでかけていたクラッシックの曲は、
プッチーニのオペラ『トゥーランドット』

氷の様に冷たい心を持つ姫が花婿を選ぶこのオペラと
同じ様にケイトは、泣きたい時は一人で冷蔵庫の中。

氷の国のお姫さまそのもの。

そんな氷の国のお姫様の心を溶かす為に現れた
花婿がニックとすれば、この話、
現代のトゥーランドットともいえるのではないでしょうか。