猫エピソード その3 ♥お上手営業猫 ろく君♥

猫エピソード その3 ♥お上手営業猫 ろく君♥

当時の私は電車出勤で、朝と夜、人もまばらだが治安のいい田舎町から出勤していた。
行きは切符が通せるのに帰りは改札機に切符が通せない。駅の係りの人に切符を回収してもらうシステムだ。
きっと一昔前は改札機なんてハイテクなものはなかったのかもしれない。
少しまだ田舎の方に行くと、駅で切符すら買えない。
今も2両編成、電車の中で支払うバスのようなシステムの名残を残すそんな線路。

そんな一つの街で、ある日の帰りに営業をしている猫がいた。
お腹がぺこぺこというわけではなかろうが、6か月程度の子猫。
ある程度は野良で暮らしていく術をいたくらいの子猫だ。
しゅっとスレンダーな黒猫。
黒猫は、帰宅する人々に片っ端から声をかけて足元にまとわりつき、ご飯下さいと甘えている。
目を合わせると確実に100%営業されるやつ。

まるで、街中でティッシュ渡す人のよう
まるで、画廊の前でポストカード渡す人のよう
まるで、まるで…
…あ、目があった。

導かれるように黒猫に営業される私。
営業されてながら私は、居候させていただいていたお母さんが、長く住んだ黒猫を1~2年前に亡くして黒猫に飢えていることを思い出した。
「………ああ、もしかしたらお前、いけるかもしれんぞ?」
と猫を片手にお母さんに掛け合いの電話。
居候の私ごときが居候先の猫を増やすのはどうかと思うが、猫屋敷の猫好きが集まるおうちだからこそできた案件である。
お母さんは、少し戸惑いつつも黒猫に会ってみたい一心に負け、「でも連れて帰ってきたら飼うしかないよね?」ということにホイホイと進み。
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黒猫は私が電話中に前を歩いていたカップルの方に営業に行ってしまっていたのだが、カップルの彼女さんが黒猫を抱き上げて私に私に来る始末。
「まだうちの猫では…ww」と思っている間にお母さんと話がついて晴れてうちの子に。

こうして黒猫ろくちゃんは誕生したのであった。
また、その家では女の子の動物が他5匹の中に男の子一人という感じで放り込まれたので、お姉ちゃんたちに怒られたりシバかれたりしながら、持ち前の営業上手でお姉ちゃんについてまわり見事に売り込むことに成功したようだった。
私と一緒にその家を出てきてしまってはいるが、ろくちゃんの営業上手は新しいおうちに来てもいまだ健在だ。
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