あなたには、心から「嫌いだ」と感じる人はいますか?
誰かが、人を嫌いになるとき、そこにはさまざまな理由があると思います。
自分にとって害があると感じる、相手が自分のことを嫌っている、自分の嫌な部分を相手に投影しているなど……。
しかし、誰か特定の人を嫌う理由は、必ずしも相手にあるとは限らないのではないでしょうか。相手のことを嫌いだと感じる「本当の理由」がわかると、それだけで気持ちが楽になるかもしれません。
「この人といると、ろくでもないことが起こる」というステレオタイプ
多くの人は、暴力などの実害があれば、相手に対して憎しみの感情を覚えるのは仕方がないことかもしれません。しかし、実際に何かしらの危害を加えられていないが、「自分にとって、この人は害がありそう」という固定観念だけで相手のことを嫌う人がいます。
もしくは、本人が直接害を与えているわけではないのに、悲しみや憎しみを感じる出来事に関わった人すべてを嫌いになる人もいます。
「この人といると、ろくでもないことが起こる」
このような思考回路ができてしまっているため、自分に有害だと思う人や害を与えてきそうな人を嫌おうとする傾向があります。
「相手に嫌われている?それなら、私も嫌い」という思い込み
「私は、この人に嫌われているかも?それなら、私だって嫌い!」
相手に嫌われている、という思い込みだけで相手のことを嫌う人がいます。
これは、心理学用語で「感情の返報性」と呼ばれるもの。感情の返報性とは、特定の相手に向けられた感情に対して、相手側も同様の感情を抱くという現象のことです。そのため、相手からの好意を感じると、自分も同じように好意を抱くようになります。他方、相手から自分は嫌われていると思うと、必死に相手を嫌おうと働きかけるようになります。
しかし、「私は、あの人から嫌われている」というのは、あなた自身の思い込みの場合もあります。相手が実際に、あなたに対してどのような感情を持っているかどうかは、本人にしかわからないものではないでしょうか。
「自分の嫌いな部分」「憧れている部分」を相手に投影している
あなた自身がつい、目を背けたくなるような短所や受け入れることができない部分を他者の中に投影すると、その相手に対して憎しみの感情が湧き上がることがあります。
反対に、「自分のなりたいもの姿、欲しいものをすべて持っている人」に対しても同様の感情を抱くこともあります。それは、自分が手にできないものへの嫉妬やひがみの感情そのもの。
これらの嫌悪感の原因は、相手にあるものではありません。間違いなく、あなた自身の心の中にあるものです。しかし、この場合は自分の短所を受け止めて改善に努める、自分に自信がつくことで次第に気にならなくなっていくことでしょう。
「間違いなく、あの人が悪い!」という正義感の誤作動
本来ならば公平性を保つために働く正義感が、特定の人に憎しみの感情を芽生えさせるという、誤作動を起こしてしまう人もいます。
「罰や悪いことは因果応報で起こる」「悪いことが起こるのはその人が悪いからだ」という考えが、ときに間違った判断を引き起こします。「悪い言動や振る舞いは、絶対に許せない!」という正義感の強い人は、自身が加害者になってしまった際、心の中で葛藤が生じます。その葛藤を解消すことを目的に、相手のことを悪者に仕立て上げてしまうことがあるのです。
嫌いな人との上手な関わり方とは
それでは、嫌いな人とはどのようにすれば上手に距離感を保ちながら付き合うことができるようになるのでしょうか。
ヒント1:嫌いな人にこそ、エレガントに振舞う
嫌いな人と、必要以上に関係を深める必要はないと私は考えます。けれども、大人の女性の方が嫌いな人と関わる際、嫌悪感をむき出しの状態で接するのはあまりにも子供じみています。
嫌いな人と意識して距離を置くことは、あなたをネガティヴな感情から守るためにも大切です。けれど、時にはどうしても会うことが必要な場面があるかもしれません。
人はどうしても、嫌いだったり興味がなかったりする相手への対応が雑になってしまいがちです。しかし、そのような相手にこそ「あえて」丁寧な言動や振る舞いを意識しましょう。ゆったりとした言葉遣いや所作は、あなたのギクシャクした気持ちを落ち着けてくれる効果が期待できます。
また、その人と会う時間を短時間で切り上げるようにしたいもの。短時間ならば、あなたの嫌悪感を相手に感じることがあまりないかと思います。
ヒント2:話す内容には、気をつけて!
嫌いな人の前では、冗談やあなた自身のパーソナルな話題はあまり話さないように気をつけましょう。このような話題を話すとき、私たちは自分が感じている感情をむき出しにしてしまいがちです。
嫌いな人に冗談を交えて話す場合、(無意識的に)嫌味な言い方をしてしまったり、つい感情的になったりしてしまうことがあるかもしれないので注意が必要です。相手との程よい距離を保つためには、プライベートな込み入った話などは避けるのがベターです。
ヒント3:勝ち負けにこだわると、ココロが疲れてくる
嫌いな人を思い浮かべた時、「この人だけには負けたくない」などといった考えが思い浮かぶことがあるかもしれません。しかし、そのような気持ちは知らず知らずのうちに相手に伝わるもの。
嫌いな人と自分自身との「勝ち負け」にこだわりすぎてしまうと、結果的にあなたが損をしてしまうことがあることはご存知でしょうか。
憎んでいる相手と「マウンティング」している状態は、あなた自身から積極的に相手へと関わりに行くこと。たとえ、その争いに勝津ことができたとしても、あなたにとって益になることはないのではないでしょうか。
嫌いな人に対しては、突き放して考える目も時には必要だと考えます。
ヒント4:「嫌い」という感情を捨てて、相手を見つめてみよう
ここまで、嫌いな人との接し方について触れてきました。けれども、できるのであれば、嫌いな人をつくらないほうがあなた自身も幸せではないでしょうか。けれども、あなた自身の心の持ち方や考えに変化がない限り、嫌いな人は嫌いなまま。嫌いな人を好きになることはできなくても、「相手のここは許せるポイント」を見つける努力はしていきたいものです。
特定の人を嫌っている場合には、その人自身だけではなく、その人の交友関係や持ち物などのすべてが受け入れられなくなることがあるかもしれません。まずはとにかく、あなたの中にある「嫌い」という感情を手放して、相手のことを見つめてあげましょう。
わがままだと感じる人は、「自分の意見をしっかりと主張できる」人。
時間にルーズだと感じる人は、「自分の心地よいペースを知っている」人。
白黒はっきりつけたがる人は、「物事の公平さを重んじる勇敢な」人。
このように、長所と短所は紙一重です。
そして、先ほど説明した「感情の報復性」は好意の場合にも、相乗効果を生むことが期待できます。つまり、相手に対して積極的に褒める、ポジティブな言葉をかけることで、相手からも同じように好意が返ってくることがあるのです。それを繰り返すうちに、いつしかあれほど憎く感じていた相手のことを、好きになっているのです。
あなたが嫌いな人は、あの人の「大好きな人」でもある
「あの人とは、肌が合わないから嫌い!」
そのようなフィルターがかかってしまった途端に、その人の存在すべてに対して悪意を感じてしまうようになりかねません。けれど、そのフィルターはあなたを幸せな気持ちにしてくれるものでしょうか。
憎しみの気持ちからは、建設的なものは何も生まれません。そして、あなたの人生において役に立つことは何もありません。
憎しみの気持ちを持つ相手のことを、「好き」になることは難しく感じるかもしれません。特定の人に対してネガティヴな感情が湧き上がることがあった際に、思い出して欲しいことがあります。
あなたが心から嫌っている人のことを、心から愛している人もいることもまた、事実であるということを。