恋の気分にひたろう!恋愛短歌4選(ページ5)

短歌のいい所は、「これ以上質問受け付けません!」という所だ。

著書の中でそう言ったのは歌人の佐藤真由美さんだったと思います(あいまい)。

5・7・5・7・7で制限されるからこそ、言葉は選びつくされ、
制限されるからこそ、私達の中に自由なイメージを湧かせる事も許されます。

今回は恋愛に関する短歌をいくつか紹介しようと思います。皆さんが中学・高校のときに習ったあの歌も出てくるかもしれませんよ。

【若さの暴走】

柔肌の熱き血潮に触れもみで寂しからずや道を説く君   -与謝野晶子
                            

(恋や情熱など、人の情動に触れてみることもせず、冷たい学問や道徳を説いているあなたは寂しくはないですか)
 【引用】 情熱の女・・・・与謝野晶子-変な雲-Yahoo!ブログ

与謝野晶子のあまりにも有名な歌なので、きっと皆さん知っているでしょう。
トヨタのCMでも使われてましたよね。
私はこの歌が大好きなんです。だから一番始めに持って来ました。

当時自由恋愛の時代ではないんですよ。今の時代だって自分の思いを人に伝えるのは難しいことです。

誰かのことが好きで好きで、思いを伝えずにはいられないから、こんなに真っ直ぐに挑発した。

そういう若さの中の純粋な激情みたいなものが、この歌からはひしひしと感じられるような気がするんです。

【ド直球】

たくさんのおんなのひとがいるなかで
わたしをみつけてくれてありがとう
            -今橋愛
                              

もう、直球です。どストレートです。
表記が全部平仮名なのも、こどもが一生懸命叫んでるみたいでなんだかかわいい。こどもの純粋さに打たれるような感じです。
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こんなこと、言う必要あるか?
とも言えるほど、私達は意識しないようなことですね。

しかし、考えてみると恋愛とは不思議なものです。
誰かのことを好きになるのに明確な理由なんてほとんどないし、言い方は悪いかもしれませんが、似たような人はいっぱいいるわけです。
でも、この人でないと!と心は決まっている。

「たくさんのおんなのひと」の中で、「わたし」を選んでくれたこと。

両思いはわりと奇跡的な事なのではないか。
今側にいてくれる人に、私達はもっと感謝すべきなのかもしれないなあ、と思いました。

【二人の夜】

バック・シートに眠ってていい 市街路を海賊船のように走るさ -加藤治郎
                            

きっとバブルの頃だったんだろう。ただの想像です。

きっとそれはこの歌に溢れる開放感からだと思うのですが。
海賊船のように走るって・・・多分気持ち良いだろうけど、そんな風に走る人はこのご時勢少ないだろう。
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情報が少ないのに、なぜか私は「夜」「男女」「バブル」をこの歌から想像したのです。

きっと彼女がものすごく若くて、年が離れてて、
「おまえ眠いんだろ、こどもは後ろで眠ってろよ」と気遣い半分意地悪半分みたいなことを言って、彼女を少し怒らせたのかもしれない。

彼女を助手席じゃなくてバックシートに乗せて、市外路をずんずん進んでゆく一台の車。
二人はどこまで行ったのだろう。彼女の家?ホテル?それとも旅行とか?

新しい旅路へと出発する、海賊のような気分だったのだろうか。
多分男は楽しかったのだろう。彼女は後ろで寝ちゃってるし、ひとりで車を運転してるわけだけど、きっと宝物でも積んでるような気分だったのだろう。

【一瞬で凍りつく空間】

この煙草あくまであなたが吸ったのね そのとき口紅つけていたのね   -佐藤真由美

冒頭にも出てきた佐藤真由美さんですが、こんな歌を詠む人です。

恋愛をしているときって、常にキラキラした気分でいられるわけじゃあり
ません。
憎しみとか嫉妬とか、恋をする事によって引き出されるドロドロした気持ちなど、真っ黒な思いで一杯になる時もあります。

別の女が吸った口紅の付いた煙草の吸殻を、なんの危機感もなく灰皿に残したままにしていた男。
当然彼女に気付かれ、問いただされる。

「ねえ」
「ん?」
「この煙草、あなたが吸ったの?」
「そうだよ」
「ふーん、口紅付けて?」
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ただの修羅場だ。恐ろしい・・・

いや、こんなにはっきりした修羅場ではなかったのかもしれない。気付いた彼女が何も言わずに、心の中で思っただけなのかもしれない。
男の裏切りに気付いて、どんどん冷えていく心・・・
でも何も言わない。
そっちのほうが怖いかもしれません。

【おわりに】


いかがでしたか。
これを読んで、短歌ちょっといいっすねえ・・・と感じる人がいてくれたら嬉しいです。
このほかにも恋愛について詠んだ短歌は沢山あるので、気になった人は色々調べて雰囲気にひたるのも楽しいですよ。