『密会・セレブと呼ばれた女―栄光と欲望の裏側―』<第1話>

プロローグへ⇐

講演が終わったばかりの控室で、遥香さんの不穏な声がした。

 

遥香の声
「二度と電話なんかかけて来ないで。今度かけてきたら名誉棄損で訴えるわ」

 

その声を聞いたとたん、真野さんの表情が一変した。

 

真野
「今の電話、かなり怪しいな。絶対に何かある。俺の勘、けっこう当たるんだよな」

紗希
「カンって……」

真野
「いいから行ってみようぜ。俺も一緒に行くから」

真野
「それにあんただって、ホントは加々美遥香の素顔、見たいんだろ?」

紗希
「…………」

 

おいしい餌を振りかざすような顔で、真野さんがニヤリと笑う。

 

真野
「関係者だって言えば平気だって。ここまで来たんだから控室も覗くしかないだろ」

 

慣れた様子で腕をつかむ。そんな真野さんに私は……。

 

紗希
「そんなのだめだよ」

真野
「ふーん、だったら俺だけ行くわ。紗希は先に帰っていいぜ」

 

あっさり言われてしまうと戻るに戻れない。

 

紗希
「…………」

真野
「ほら、本当はやっぱり行きたいんだろ? 素直になれよ」

 

まるで悪びれない様子に、気づくとうなずいてしまっていた。

真野さんは『PRESS』の腕章を外すと、慣れた様子でドアをノッする。

するとすぐに、中から返事が返ってきた。

 

遥香の声
「……はい」

真野
「失礼します!」

レコメンド
続きを読む
人気記事

こちら記事も人気です

モバイルバージョンを終了