『病院の花嫁~愛の選択~』<ノーマルエンド>~松宮ルート~

第7話へ⇐

政治家への献金を始め、お義母さまが病院の資金を私的流用していたと知った惣一朗さんは

その証拠を手に警察へ行き、こう君の誤解を晴らしてくれた。

こう君は釈放されたが、代わりにお義母さまは逮捕され、鈴恵さんは事情聴取を受けている。

惣一朗さんは、私は妻、家族だと言ってくれた。

入院費用はもちろんオペ代も支払うと言い、立川病院への入院を勧めてくれた。

入院費用は、全て返金しようとこう君と相談している。

 

美咲
(惣一朗さんの優しさに、そこまで甘えられないもの……)

美咲
「ごめんなさい……私のせいで」

惣一朗
「誤解しないでくれ、君のためじゃない」

美咲
「惣一朗さん」

惣一朗
「自分のため、この病院のためにやったんだ」

 

どれほどの覚悟があって行ったのだろう。

自分の母親を告発したのだ。

 

美咲
(この人は立派だ。それなのに私は、夫であるこの人を裏切り、深く傷つけた)

美咲
「惣一朗さん……私」

 

次の言葉が出てこなかった。

全てを許し、受け入れてくれた惣一朗さんに対して、どう感謝の気持ちを示していいか分からない。

気まずい雰囲気を打ち消すように惣一朗さんが口を開いた。

 

惣一朗
「ようやく、この病院を背負う覚悟が出来たよ」

美咲
「惣一朗さんなら、お義父様に負けない立派な院長になれるわ」

 

本当に、心からそう思う。

 

惣一朗
「君と一緒に、歩んでいきたかったが……」

美咲
「……ごめんなさい」

惣一朗
「謝らなくていい、僕にも責任がある」

美咲
(惣一朗さんは悪くない。私があなたを愛せなかったから、妻になれなかったから……)

惣一朗
「焦ったんだ、君の気持ちを知ってたから、僕は色々と急ぎすぎた」

美咲
「私の、気持ち?」

惣一朗
「一目みて、君が彼のことを好きなのが分かったよ。だから……」

美咲
(やっぱり、私の気持ちに気付いていたのね……)

 

だとしたら、病院で私が松宮先生と仲良く話す姿は、惣一朗さんを不安にしたはず。

 

惣一朗
「君を、僕のものにしたかった。
夫婦という戸籍上の繋がりではなく、君の心を……」

 

惣一朗さんは、目を伏せて悲しげに語った。

 

惣一朗
「与えられることに慣れ過ぎて、どう気持ちを伝えていいか分からなかったんだ」

美咲
「私も、お義母さまや鈴恵さんの事を気にし過ぎて……まず、あなたと向かい合うべきだったのに……」

 

私達、お互いどこかで遠慮していたのかもしれない。

もっと早く話をしていれば……。

ふと気づくと、こう君が戸口に立っていた。

惣一朗さんは、私を病院に迎え入れてくれた上に、オペの執刀をこう君に任せてくれたのだ。

 

松宮
「そろそろ時間です」

惣一朗
「オペが終わるまで、外で待っていてもいいかな」

松宮
「もちろんです」

松宮
「立川先生、先生の寛大さに深く感謝いたします」

惣一朗
「僕は医師として、美咲を治せるのは君しかいない
そう判断しただけだ」

 

オペが終わったら、惣一朗さんと向き合って正直な気持ちを伝えよう。

彼の誠意に対して、私も誠実な態度を示そう。

それが、また惣一朗さんを傷つけることになってたとしても……。

自分の気持ちを偽ってはいけない。

また悲劇を生んでしまう気がするから……。

 

惣一朗
「美咲、がんばれ」

 

惣一朗さんの温かく優しい眼差しは、私の胸を切なく締めつけた。

レコメンド
続きを読む
人気記事

こちら記事も人気です

モバイルバージョンを終了