女中1
「はぁ、今日はなんだかいつも以上に疲れちゃったわ」
女中2
「けど、若旦那様があんなこと言ってくれるなんてね」
女中3
「驚いたわ」
女中1
「それもこれも、夏井さんのおかげかしら」
ハナ
「え……?」
寝支度をしていると、いつも無駄話をしない女中たちが次々に口を開いた。
その中には、若旦那様の言葉に涙を流していた人も。
女中2
「私、今の今まで、ずっと感情を殺してきた。本当はみんなとも話をしたかったけど、余計な感情を持っちゃいけないと思って……」
女中1
「私も。でもさ、なんか若旦那様に言われて……そうだよね、なんで我慢してたんだろうって」
女中3
「そうそう。ほんっと色々耐えられなかったもん。あのわがままお嬢様」
女中2
「これからはもっと伸び伸びと仕事するわ」
口々に言いながら、みんな布団にもぐる。
この部屋に、こんなに話し声が聞こえるなんて。
こんなに笑顔があふれるなんて。
お屋敷に来たばかりの頃は思いもしなかった。
女中1
「さて、と……それじゃあそろそろ寝ましょうか」
女中2
「ええ、明日からはなんだか頑張れそうな気がするし」
いつもと違う、大部屋の夜。
私も微笑みながらみんなに挨拶をして布団へと横になる。
と……どこからか不思議な音が聞こえてきた。