『大正浪漫ラヴストーリー』 <第5話>

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トメ
「ハナ、ハナ」

ハナ
「は、はい! なんでしょう、トメさん」

トメ
「ああ、いたわね。
掃除はいいから、買い物に行ってもらえないかしら」

ハナ
「買い物、ですか?」

トメ
「ええ、若旦那様に頼まれていたものがあって。書店へお願い」

ハナ
「わかりました」

 

若旦那様と話をしたあの夜。
私は弱音を吐いた。

そのおかげか、落ち込むことはまだあるけれど女中として仕事を続けていられる。

食堂でのお仕事は……まだ、させてもらえていないけど。

 

ハナ
「お買い物、行ってきます」

ハナ
「いつ来ても、ここは賑わってるなぁ」

 

お買い物には何度か出ているけれど、たくさんのお店に、たくさんの人のここはまだまだ慣れそうもない。

だけど、初めて東都の地を踏んだ時から比べれば、いくらかは都会人らしくなっているのかな。

お屋敷周辺の地理は覚えたし、買い物の仕方だって覚えた。

村に居る頃は……買い物なんてほとんどなくって、畑で出来た野菜を何かと交換してもらっていたばかりだから……。

 

店主
「こちらですね。はい、丁度」

ハナ
「ありがとうございます」

 

最初は、お金の渡し方すらわからなかった。
誰もがそんな私を好奇の目で見てた。

ここに暮らす人は知らないんだ。
未だに、物々交換で成り立ってる場所があることを……。

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