自らが理事長を退陣した上に、惣一郎さんまで院長の座から退くことになり、義母は伏せってしまった。
美咲
「お義母様、何か食べないと身体にさわります」
義母
「ほっといてちょうだい…私なんて、いなくなればいいのよ」
美咲
「そんな悲しい事言わないで下さい」
義母
「惣一郎まで巻き込んでしまうなんて……」
惣一朗
「僕は医師だ。この資格があれば、どこでだって仕事ができるよ」
義母
「惣一郎、帰っていたのね」
惣一郎
「ただいま、母さん。どうだい、少しは食べられるようになったかい?」
美咲
「それが、朝から何も召し上がらなくて……」
すっかり気が弱ってしまったお義母さまが心配で、私はここ数日病院を休んでいる。
惣一朗さんも気にかけているけれど、連日の騒動で病院の周りはまだ落ち着かず、毎日出勤するしかないのだった。
消化器外科医として診察、オペをこなし、院長職まで。
しかも、院長職は通常の業務に加え、引き継ぎ業務も……。
週明けの臨時理事会で、新しい院長が選出される。
あと数日と分かっていて、多忙な業務をこなすのは、どんなに虚しいだろう……。
それなのに、惣一郎さんの顔は晴れやかだった。