紀美子様の前に並べられたショールと切れ端。
小刻みに体を震わせた紀美子様が私を睨んだ。
紀美子
「そのショールがなによ。あたくし、明日も学校があるからくだらない話をするのなら部屋へ戻らせてもらうわ」
清人
「このショールはトメさんに直してもらおうとした物らしいな」
紀美子
「…………」
清人
「いつものお前なら、破れた物は捨てていただろう。だが、このショールはずいぶんと気に入っていたな?」
紀美子
「だ、だから何よ! そうよ、破れたからトメに直すよう言ったの」
清人
「どこで破れた?」
紀美子
「し、知らないわよ! 気がついたら破れていたの」
清人
「そうか。では破れた場所を教えてやろう」
若旦那様は切れ端を持ち上げながら紀美子様の眼前に差し出した。
清人
「母様が指輪をなくしたと言っていた場所だ」
紀美子
「っ……」
紀美子様がぎりっと唇を噛む。
清人
「それと、指輪を紀美子の部屋から見つけてもらった。トメさん」
トメ
「こちらでございます」
可愛らしい細工を施した木箱をトメさんが若旦那様へ手渡すと、紀美子様は狂ったようにテーブルへと思い切り手をついた。