――文明開化と共に訪れた華やかな時代。
けれど、それはほんの一部の人間しか味わうことの出来ない世界。
夜毎ひらかれる舞踏会なんて、夢物語。
ほとんどの人間は貧困にあえいでいた。
学校にも通えず、貧しい農村で朝から晩まで畑仕事。
それでも苦しい生活は変わらず、奉公に出されたり、人買いに売られたりする人間が後を立たなかった。
泣く泣く、村を出て行く人たちを幼い私はただ漠然と見送ることしか出来なかったけれど……。
まさか、自分がこの村を出る日が来るだなんて、その時は思ってもみなかった。
これから、辛く苦しい日々が始まるだなんて――