元気よく屋敷を後にした私は、森の中で途方にくれていた。
イリス
「……完全に迷子だわ……」
今まであまり外へ出歩くことを許されていなかったため、土地勘がまったくないということに、今さら気がつく。
イリス
(とりあえず、お腹も空いてきたし、お昼ご飯を食べてからまた歩こうかな)
私は休憩を少しだけとってから、また歩き出した。
イリス
(けっこう暗くなってきちゃった……)
アタッシュケースの中からランプを取り出し、火を灯す。
屋敷を出てからもうだいぶ歩いているはずなのに、未だに街の明かりすら見えず、あるのは木々ばかり。
葉が生い茂っているため、星はところどころしか見えない。
イリス
「!?」
遠くから野犬か狼か判別がつかない声が聞こえてくる。