パーティのお手伝いが終わった夜。お屋敷からの帰り道で、食事に誘われた。
真野
「あんただって腹減ってるだろ? メシ、食いに行こうぜ」
というよりも、ガード下の飲み屋さんに近い焼き鳥屋だった。
カウンターの隅にテレビが置かれ、店主が見るともなしに眺めている。
紗希
「ここ……?」
真野
「なんでだよ?」
逆に聞き返されてとまどってしまう。
紗希
「こういうお店って、普段なじみがないから」
とまどいながら答えると、ああ、そうかと初めて気づいたようにうなずいた。
真野
「だよな。女同士じゃこんな店には来ないか」
真野
「この店、安い割にけっこう旨いんだ。おごってやるよ」
慣れた様子で席に着き、メニューを開く。そんな真野さんに私は……。
紗希
「いいの? ありがとう」
素直にお礼を言うと、真野さんがおかしそうに笑う。
真野
「お前さぁ、ちょっとは遠慮とかしないわけ?」
紗希
「……え」
真野
「ま、いいや。そういう素直なとこも、別に嫌いじゃないから」
紗希
(……え?)
深い意味はないとはわかっているけれど、ドキッと胸が鳴った。