『密会・セレブと呼ばれた女―栄光と欲望の裏側―』<第2話>

控室を訪ねていた私たちの前で、遥香さんの携帯が鳴った。

 

遥香
「……大事な仕事の話なの。ひとりにしていただけないかしら」

 

静かだけれど、強い口調。私は取り出した名刺を置いて部屋を出る。

廊下に出たとたん、真野さんがつぶやいた。

 

真野
「さっきのあれ……何かありそうだな」

紗希
「どういうこと?」

真野
「あれは、仕事の電話じゃねえな。たぶんプライベート……で、おそらく相手は男だ」

紗希
「旦那さんじゃないの?」

真野
「なんで旦那なんだよ。旦那なら『仕事の話』なんてごまかす必要ないだろ?」

紗希
(あ、そうか)

真野
「それに仕事の相手なら、大体『おつかれさまです』とか『お世話になっております』とか言うよな」

紗希
「あ……」

真野
「だけどさっきは……」

遥香
「……ごめんなさい。今ちょっと……後でかけ直すわ」

紗希
「……普通の言葉遣いだった」

真野
「ってことはつまり……どういうことだ?」

 

真野さんが私を見つめて意味深に笑う。

 

紗希
(じゃあやっぱり……)

 

納得しながらも、真野さんの観察眼の鋭さに内心、舌を巻いていた。

その時、講演後のパーティ開始を告げる放送が流れ始める。

 

紗希
「いけない、行かなくちゃ」

 

私は、真野さんと一緒にパーティ会場へと向かった。

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