鈴恵さんがつくった借金を払いきれず、借金取りに催促されていると告げると、
心配して集まってくれた松宮先生をはじめとする職員達は思わぬことを言いだした。
松宮
「そういう事なら、問題が解決する間、給料減額でかまいません」
鈴木
「私も協力します」
婦長
「私も、といっても、息子が大学に入学したばかりで、数万の減額なら……」
美咲
「皆さん、ありがとうございます」
惣一朗
「問題が解決したら、必ずこのご恩はお返します」
集まった18人、全員が協力してくれるという。
良かった、何とかなるかもしれない。
芳恵
「その必要はないわ、職員に迷惑はかけられません」
美咲
「でも、お義母さま」
芳恵
「あてがあるの、あんな連中とは一刻も早く縁を切らなければ」
惣一朗
「誰に借りるんだ、母さん!」
芳恵
「あなたは心配しなくても、いい事よ」
お義母さまのこの表情、何か隠している気がする……
理事長である芳恵が倒れた為、しばらくの間、私が代わりに経営に加わることになった。
美咲
「こんなに銀行の融資が?」
平和銀行の他に二社、多額の借入があったなんて……。
事務長
「かなりの額と思われるかもしれませんが、経営は黒字ですから問題ありません、この規模の病院ならどこもこんなもんですよ」
美咲
「そうですか」
事務長
「古くからの付き合いということもあって、金利も優遇されてますしね」
美咲
(金利……)
美咲
(そうよ、鈴恵さんの借金の金利はどう考えても異常だわ)
美咲
「事務長、金利の額って決まっているんですか?」
事務長
「一昔前は法外な金利がまかり通っていたようですが、この頃は、年利20%を超えると違法。
取り締まりの対象になるようです。例え町金、闇金のたぐいでも」
やっぱり、鈴恵さんの借金の金利はおかしい。
お義母さまも惣一朗さんも騒ぎが大きくなって、病院の名前に傷がつくことを一番恐れているけれど、
このまま要求通り払ってはいけないわ。
惣一朗さんは、人手が足りない分、休みも返上して勤務している。
私が、何とかしなくては……。