無茶苦茶せつない恋愛小説「天使三部作」を読もう。

【天使の三部作】

ほんとうは出版時期に合わせてリアルタイムで読むべき小説であるのかもしれない。村山由佳のいわゆる「天使三部作」のことである。

デビュー作『天使の卵』に始まり、『天使の梯子』、『天使の棺』と続いたこのシリーズは、村山由佳的なるもののすべてが込められてた名作だ。

初めの『天使の卵』がミリオンセラーを達成してから、完結編『天使の棺』が刊行されるまで、実に20年弱。それだけ、時間と手間をかけて描かれるべきシリーズだった、ということができるに違いない。

思えば、村山はデビュー時、「格調高い文学でなくていい。全ての人を感動させられなくてもいい。ただ、読んでくれた人のうち、ほんの何人かでいいから心から感動してくれるような、無茶苦茶せつない小説が書きたい」と語ったものだった。

その意志は、約20年後の『天使の棺』においても、何も変わってはいない。そこにあるものは、恋の切なさだけを切り取って言葉にしたような、センチメンタルな物語だ。

しかし、村山が20年間にわたって作家として生きのこってきた事実は、彼女の作品がただ「泣ける」だけの甘ったるい代物ではありえないことを示している。

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