美咲
「お義母さまが?」
惣一朗さんから聞いた話はにわかに信じがたかった。
お義母さまが、病院の資金を私的流用していたというのだ。
お義母さまも鈴恵さんも、確かに派手で金遣いが荒いけれど……。
美咲
「お義母さまは、立川病院を何より大切に思っていたはずよ」
惣一朗
「母は自分の力で病院を大きくしたと思い込んでいる。
そのおごりが、公私混同させたのだろう」
お義母さまが病院の資金を使い込んだ証拠を持ち、警察に説明に行くと惣一朗さんは語った。
惣一朗
「そうすれば、松宮先生の潔白が証明され、釈放されるだろう」
美咲
(裏切った私達を、そこまでして助けてくれるというの?)
惣一朗
「君の病状は深刻だ。オペができる医師は少ない。松宮先生が必要だ」
美咲
「でも、私のために病院が……お義母さまが……」
惣一朗
「これは僕のため、病院のため、そして、母のためだ、もちろん……」
美咲
「……」
惣一朗
「君のためだ……僕は、君に助かって欲しい」
私を真っ直ぐに見つめる惣一朗さんの視線を感じる。
惣一朗さんに対して申し訳ない気持ちからずっと節目がちに話していたが
顔をあげ、真っ直ぐ見つめて深く頭をさげた。
美咲
「惣一朗さん、感謝します。本当にありがとう」
惣一朗
「今まで、僕は君に無関心過ぎた。最後くらい、関わりたいんだ」
その言葉が、温かく胸に沁みた。