【怪談】バラバラ事件⑶先祖の悪行の代償に末代まで長男の命を獲られた一族【芦屋道顕】

【怪談】バラバラ事件⑶先祖の悪行の代償に末代まで長男の命を獲られた一族【芦屋道顕】

【怪談】バラバラ事件⑶先祖の悪行の代償に末代まで長男の命を獲られた一族

⑴⑵を先に読んでくだされ。バックナンバー↓
芦屋道顕の真夏の怪談(ベリーグッド)

■谷川の神は約束を守ったが

村八分の家の一人息子を、一族の長男の身代わりに谷間の神の生贄に選び、彼が黒い何者かに川底へ引き摺り込まれた直後のことだった。「里の方から煙が上がっているぞ」誰かが叫んだ。里が見下ろせる高台に集まった村人は皆、彼らを追いやった人々が住む里の村一帯から火の手が上がり黒煙が立ち上っているのを目の当たりにした。谷間から里に降りる唯一の道に立ち塞がっていた兵もいなくなっていた。谷川の神は約束を守ったのだ。

村人の何人かで里の様子を見に降りたところ、敵の村は全て焼かれていて、そこに人の気配はなかった。「良かった。これで里に帰れるぞ」一族と村人は皆でようやく、里に降りることにした。

■謀られた谷川の神の怒りと子を奪われた母の恨みが恐ろしい呪いに

しかし、一人息子を一族の長男の代わりに取り上げられ生贄にされた村八分の家の母はせめて息子の遺骸を見つけ手厚く葬ろうと谷間に残った。人々が去った夕刻に川にやってきた。すると、川岸には顔も身体も喰いちぎられ変わり果てた我が子の骸が打ち上げられていた。「なんと惨いことを」骸のあまりにひどい有様に、母は葬ろうと思ったことも忘れ錯乱したように叫び声をあげると、川に身を投げた。

しかしなぜか溺れず、何やら声が聞こえてきた。「おい、女。今朝わしが喰ろうたあの童はお前の子だったのか?」女は答えようと口を開いたが水が流れ込み答えられない。しかし、心で答えた。「そう、あれは私の子。◯◯(村を支配する一族)の長男の身代わりにされたのです)「なるほど、やはり。ならば女よ。さぞかし◯◯が憎かろう。わしも、たかが人間に謀られるとは。よし、わしが仇を討ってやろう」(なんと、有り難い。ならばこの身を捧げます。あの一族にも同じ目に。末代まで……。)女は心の中で強く願いながら息絶えた。

谷川の神と女の呪いを受けたとも知らず、里に降りた一族と村人達は焼け落ちた敵の村の跡に自分たちの村をつくった。かつて土地を追われる前の村同様に家が立ち並び、平穏な日々が過ぎていた。誰もがあの谷間のことを忘れていたある秋のこと。収穫間際の作物が全て、一夜にして枯れ果てた。そして、大雨が降ってあの谷間から流れる川が増水し村にも水と土砂が流れ込んだ。「なんということだ。これでは、あの谷間と同じじゃないか。やはり谷間の化け物を騙したから怒ってるんだ」「いやいや、これくらいのことは何年かに一度はある」「そうだそうだ。縁起でもないことを言うんじゃない」

しかし、雨が止み水が引いてから残った土砂を掻き出して村人たちは、恐ろしいものを……。人の骨を見つけてしまった。泥だらけの布を纏った2人分の、大人と子供らしき骨。獣の骨ではないことは一目瞭然だった。「これは、あのときの替え玉の子供と、里に降りて来なかったあの母親の骨じゃないか」「そういえば、今日はあれからちょうど一年じゃないか」「やはり谷間の化け物が怒っている」「いや、これはあの母子の恨みだ」さすがに恐ろしくなった村人たちはその骸を村の墓に手厚く葬ろうと言った。しかし、一族はそれはだめだと、村八分の墓は死んでからも村には入れられないと、村外れの東西南北に穴を掘らせてそれぞれに母と子の骨を頭と身体に分けて投げ込んだ。「こうすればあの世でも会えるまい。結託して俺たちに祟ろうなんて、そうはいかんぞ」当時、その村を含む一帯には、極悪人を死罪にした際にはあの世でも復活出来ないようにと、頭と身体を別々に葬る風習があったのだ。

■末代まで、長男がバラバラに

しかし、それでも災いはおさまらなかった。土砂は掻き出したが泥だらけの村では病気が蔓延し、作物も収穫できなかったので皆が飢えに苦しんだ。狩りに森に入った村人はことごとく獣に噛み殺された。谷間にいたときよりも村人が死ぬ頻度は増えて、村人たちはついに一族の主に詰め寄った。「あんたがあんな卑劣なことをするから化け物を怒らせた。あの母子の恨みも買った。そもそも、あの負け戦はあんたら一族が勝手に始めて、俺たちは巻き込まれたんだ。今からでも、責任を取ってくれ。でなければ長男だけじゃない、あんたも、あんたの一族全員、今ここで俺たちが殺してやる。この災いがおさまらなければ、そのときも殺してやる」

村人たちに脅されて、一族はその夜まだ幼く何も分かっていない長男が寝入ったところを起こさないように抱き抱え谷間に向かった。かつて村八分の息子を差し出した同じ川岸にそっと横たえると、あの得体の知れない黒いものが現れてすぐさま川の底に引き摺り込んだ。一族の主はその黒いものに向かって叫んだ。「これで、約束は果たしたぞ。村は無事になるんだろうな。お願いだ、喰った後でいい。あの子の骨は返してくれ。一族の墓に入れてやりたいんだ」

すると、川底から今度はあの黒いものではない、別の声がした。「お前の子の骨は返してやろう。しかしお前の一族の墓になど入れさせない。お前の子の骨は、お前が掘った村外れの四つの穴に頭と胴体、両手と両足に分けて埋めるのだ。お前には死んだ子の他にも息子がいるな。その息子は助けてやろう。しかしその息子がやがておまえの一族の主となり初めての子を授かったら、それが男ならば
6歳になる年に同じようにここに連れてこい。そしてまた四つの穴に埋めるのだ、お前の一族の血筋が続く限り。これを怠れば村人全員が死に絶えるまで災いを起こす」

翌朝、村から程近い川岸に小さな子供の骸が打ち上げられていた。村人達の監視の中で、一族は声に言われた通り、東西南北に掘った穴に分けて埋めた。それからはこれまでのような災厄は起きなくなった。

何世代かその一族と村が存続した間、その因習は受け継がれた。しかし、何代目かの主は呪われた血筋を終わらせるべく、生涯結婚せず子を持たなかった。その臨終に立ち会った村人達は「これでもう、我々も安全だ」と胸を撫で下ろした。

それからしばらくして、何百年に一度の巨大な地震が起きた。遠く離れているはずのあの川が氾濫し村を飲み込んだ。全ての家が押し流され、村の墓も押し流され、村外れに掘られた穴も、そこに埋められたあの母子の骨も一族の歴代の長男の骨も全て押し流された。

芦屋道顕の怪談
生き残った村人は何人かいたが、水が引いたあと村を再建する者はおらず、皆その土地を離れていった。(終わり)

**. **. **. **. **. **. **.

自殺した夫の愛人が娘として生まれ変わってきた?ほかにも怖い話多数!
芦屋道顕の真夏の怪談(ベリーグッド)
芦屋道顕の真夏の怪談(キュンコレ)

不幸な人生は呪いのせい?呪いの解き方・不幸の連鎖を脱却する秘密の数々は電子書籍にて★

辛口オネエ式★引き寄せの法則~不幸な人生を自分で脱却する方法

『現代の呪(芦屋道顕)』電子書籍はこちら