『大正浪漫ラヴストーリー』<ハッピーエンド> ~直哉ルート~

『大正浪漫ラヴストーリー』<ハッピーエンド> ~直哉ルート~

第14話へ⇐

a0008_002750

どれくらい、私たちは抱き合っていたのだろうか。
直哉さんが月を見上げながらゆっくりと起き上がった。

 

直哉
「なんか……ごめんね。情けない部分、見せちゃった」

 

どこか照れくさそうに言った直哉さん。
けれど、弱音を吐きたくなるのもわかる。
今まで当然に出来ていたことが、出来なくなってしまうかもしれないのだから。

 

ハナ
「あの、直哉さん……いいですか?」

直哉
「ん? 何?」

ハナ
「実家に戻ってしまえば、活動は制限されてしまうかもしれませんが……お金が無くては何も出来ないと思うんです」

直哉
「え?」

ハナ
「貧しい人を救うには、どうしたってお金がかかるんです。華族や政府に楯突くような風刺活動じゃなければ、きっと直哉さんのお父さんも考えてくださるんじゃないんですか?」

直哉
「風刺活動じゃなければ?」

ハナ
「そうですよ。一度、お父さんときちんとお話してみてはいかがですか?」

直哉
「親父と……話……。そう、だね。ハナちゃんの言うとおりかも。俺、松乃宮を潰すことがずっと頭にあったから……結構目立った行動しちゃってたけど、今はそうじゃないもんね、話して……みようかな。その時はさ、ハナちゃんも一緒にいてくれないかな?」

ハナ
「え?」

直哉
「俺1人じゃ親父ときちんと話せる自信無くて……なんて、また情けないこと言っちゃったね」

ハナ
「情けなくなんかないです! 私で良ければ、一緒にいますよ」

直哉
「ハナちゃん……もうっ本当にいい子だね」

 

泣きそうな笑顔を向けた直哉さん。
私に向き合うと思い切り体を抱きしめた。
何度目かの抱擁に、気恥ずかしさはあったけれど……不思議と安心した。