専業主婦の革命? 女性が「ハウスワイフ2.0」から学べること。

専業主婦の革命? 女性が「ハウスワイフ2.0」から学べること。

【あたらしい専業主婦】

『ハウスワイフ2.0』という本をご存知でしょうか?

いま、ちょっとした話題になっている一冊なので、もしかしたら聞き覚えがある方もいらっしゃるかも。

ハウスワイフとは専業主婦のこと。この本はいまアメリカで流行しつつある「あたらしい専業主婦」を追いかけています。

こう書くとちょっと胡散臭い雰囲気がただよいますが、それは誤解です。著者はあくまで現象から距離を保ちつつ、批判的な視点で問題を切り取っています。間違えても「やっぱり女は主婦よね!」などという脳天気な本ではありません

著者によれば、ハウスワイフ2.0は母親たちの世代の仕事第一主義に対する反発から生まれ、しばしば「60年代のフェミニズム」を敵視しているのだとか。

したがって、理想的なハウスワイフ2.0とは、ネットを駆使して世界中に情報発信し、収入と余暇を両立させ、子育てや生活を楽しむ、そんな夢のようなライフスタイルということになります。

ところが、残念なことに、そういう理想的な暮らしを実現できているひとはやはり少数。大半のひとはもっと極端で保守的なライフスタイルを選択しています。

【四つのポイント】

本書によると、ハウスワイフ2.0を成功させるポイントは四つあるそう。

1.男性にも手作り家事に参加してもらう。
2.経済的自立を大切にする。
3.ほどほど恵まれている中産階級だと自覚する。
4.社会全体の利益を考える。

つまり、ほどほどに豊かな生まれで、夫も家事に協力的、しかも経済的に自立できているなら、ハウスワイフ2.0は最高の生き方かもしれないということ。

ですが、いったいこれらの条件を満たした女性がどのくらいいるでしょう? この文章を読んでいるあなたもちょっとため息を吐いてしまうのではないでしょうか?

人生の選択肢として専業主婦を選ぶことは、当然、「あり」でしょう。しかし、そこには巨大なリスクが付きまといます。

オシャレでアクティヴなハウスワイフ2.0をめざすつもりが、いつのまにやら退屈でむなしいハウスワイフ1.0に収まっていた、という可能性は十分にありえる。

保守的な人々は「やっぱり赤ちゃんは母親が自分で育てるのが自然」と語るかもしれませんが、結婚、出産、育児で犠牲にするキャリアは小さいものではないかもしれない。あくまで慎重に考えることが大切ですね

【夢はあくまで夢なのかも】

とはいえ、どこまでも狭い門をくぐり抜けられる可能性を信じて出世競争を目指したとしても、現実的にその道で女性が成功できる見込みは高くはないわけで、「いったいどうすればいいの?」といわれそう。

いや、ほんとに、いったいどうすれば良いんでしょう。ここらへんの女性の悩みは、日米であまり変わりがないのかもしれません。男女平等のタテマエを掲げながら、じっさいにはそれを実現できていない先進国特有の悩みということになるでしょうか。

もっとも、ワークライフバランスという観点から見るなら、やはりハウスワイフ2.0は魅力的です。やっぱりそうできるならスローでシンプルな「素敵な暮らし」をしたいと思うひとは少なくないはず。

まあ、あまりにスローすぎ、シンプルすぎるのは問題でしょうが、そこそこスロー、そこそこシンプルな人生は素晴らしいのでは?

つまり、極端な自然主義に走らないなら、ハウスワイフ2.0はひとつの生き方として十分に「あり」だと思うわけです。

というか、一部のトップエリートを除けば、この成熟社会においてモーレツに仕事したところで割に合わないことは目に見えているので、家庭や友人に充実を求めることは間違えていないはず。

このハウスワイフ2.0、日本でも日本なりの形で流行しはじめているといいます。構造的な不況が20年にわたって続いているこの日本で、女性たちが仕事に命を賭ける気になれないことはむしろ当然かもしれません。

とはいえ、いままで見て来たようなハウスワイフ2.0の問題点は日本でもやはりあてはまります。軽率に専業主婦の道を選んで後悔するようなことは避けるべきでしょう。

もちろん、現実的に子育てをしようと思えば、仕事に専念することができないのは事実かもしれません。ここらへん、目ざす幸せを手に入れるためには、非常にむずかしいバランス取りが必要になりそうです。

仕事か? 家庭か? その二択ではなく、もっと豊かな選択肢があれば良いのですが、どうにもこうにも女性たちにとって現実はきびしいままのようです。

フェミニズムに失望したところから生まれたハウスワイフ2.0。はたしてどのくらい永続的な運動になっていくのでしょう。いまのところそれはわかりませんが、女性のライフスタイルに対する新たな提言であることはたしかであるようです。

そこから何かしらのヒントを得つつ、豊かな生活を実現したいものですね。そう、たとえ、それが夢のような暮らしとはいえないとしても。