「ハリスと私がバディを殺したの」
死期の近づいたアン(ヴァネッサ・レッドグレーヴ)は、娘たちに告白するのです。
いったい何があったのでしょうか?
それはアンが20代のころに起こった切なく哀しい出来事でした。
若いころのアン(クレア・デインズ)は、大学時代の親友ライラ(メイミー・ガマー)の結婚式でブライズメイドをつとめるために、ライラの家の別荘を訪れます。
この別荘のあるロードアイランド州ニューポートの風景が素敵で、美しい映像がさらに切なさを増殖するのです。
ライラの結婚式のために集まった若い友人たち。
恋の予感がします。
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アンは、ニューヨークのクラブで歌を歌っている歌手なのですが、力強く、希望にあふれていて美しい女性。
男性からモテモテなのです。
このアンのモテモテエピソードが、「あー恋っていいな」というものばかりで、胸がキュンキュンしっぱなしなのです。
ライラの弟 バディ(ヒュー・ダンシー)とアンが美しい別荘で踊るシーン。
2人がお似合いでとても楽しそう。
クレア・ディンズとヒュー・ダンシーはこの映画の共演のあと結婚するので、二人の出会いの映画でもあります。
そういう幸せ感があふれているシーンです。
ライラとバディの幼馴染の ハリス(パトリック・ウィルソン)は、家政婦の息子から医師になった真面目な頑張り屋さん。
女性なら誰もが恋してしまうようなイケメン医師に成長しました。
酔いつぶれたバディを、アンとハリスで介抱したあと、「あの星は、僕たちの星だよ」とか言って、いきなりアンにキスしようとしちゃうんですよ。
アンがライラの式で歌を披露する時も、ハリスは、いきなり立ち上がってアンと踊り始めたりして、ちょっといくらイケメンだからって自由すぎるのです。
バディは繊細な性格で、姉のライラが、ほんとうはハリスのことを好きな事に気がついていて、心配しています。
繊細がゆえに、お酒に頼ってアルコール依存症ぎみ。
ライラは、勇気のある女性です。
自分の結婚式の前の晩、ハリスに告白しちゃいます。
「彼とのチャンスがあるか知りたかった」と。
ハリスには断られてしまうのですが、結婚する前に確かめた彼女の勇気はすばらしい。
そして、予定どおり婚約者と結婚できる芯の通った女性です。
バディは、愛情の深い人。
愛情深いゆえに、自分のまわりの人を愛してしまう。
姉もハリスもアンのことも。
アンのことをひそかに愛しているバディは、アンが大学時代に書いた、たわいもないメモを4年間もずーっとポケットにしのばせていのるのです。
もうインクが消えて字も読めないのに。
こんな切ないエピソードを初めて見ました。
アンがなぜバディを殺してしまったと思っているのか、ハリスとの恋はどうなるのか。
とっても切ない理由なのですが、知りたい方は映画をご覧ください。
愛した人と二人で、ボートに乗って、海をどこまでもどこまでも行けたらどんなに幸せでしょう。
そういう想像をめぐらせているときこそが、美しい輝いた時間なのかもしれません。
現実には、そうならなかったとしても。
本当に心から好きだと思った人と必ず結ばれるわけではないのが人生。
お互いに好きであっても、結婚できないことはあります。
自分の死期が近づいたときに、誰のことを一番に思い出すかは、そのときが来てみないとわかりません。
アンは人生の最後のときに、自分の娘たちに語ります。
人生に過ちなどないと。
たとえどんな過ちを犯してきたとしても、すべきことをしてきただけ。
恋をして、人を愛して、そんなふうに人生の最後を迎えられたら、幸せですよね。
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「いつか眠りにつく前に」2007年公開作品。ラホス・コルタイ監督