大学の卒業式の夜遅く、
ずっと憧れていた彼と二人きりで過ごせるチャンスが偶然舞い降りたら、
あなたはどうしますか?
主人公のエマ(アン・ハサウェイ)は、舞い込んだチャンスを活かし切れず、自分のアパートまで連れて行くも、なんと添い寝するだけで終わってしまいます。
大学生という年頃で、そんなこと可能なのか?と思ってしまいますが、
結果的には、これが憧れの彼デックス(ジム・スタージェス)との長い友情の始まりとなるのです。
この日は、7月15日。イギリスでは聖スウィジンの日という祝日で、マザーグースにはこんな詩があります。
「聖スウィジンの日に雨降れば、40日間雨つづき。
聖スウィジンの日が晴れならば、40日間雨はなし。」
「ワン・デイ」とはこの二人の出会った日である7月15日のことで、映画では、1988年の7月15日から2011年の7月15日までの23年間の二人の関係を描いています。
この日、男女の関係になるチャンスがあったにもかかわらず、あえて友達でいようと決めた2人。
とは言っても、エマの方は、ずっとデックスの事を好きでいることには変わりません。親友として付き合うのですが、片思いし続けているのです。
デックスは、名家の出身で派手な恋多き男。エマは地味に生きてきて恋にも奥手な女性。
性格も生い立ちも違うのですが、お互いの人生も、なかなか交錯しません。
お互いに、相手を必要とするタイミングが、なかなかうまく交錯しないのです。
一歩踏み出してもいいと思う時には、相手に恋人がいてタイミングが合わず、結局、お互いに親友として過ごすことになります。
デックスは、派手なテレビ業界に就職し、深夜のイケイケ番組の司会に抜擢され毎晩パーティ三昧で遊びまくる日々。
エマは、ロンドンのメキシコ料理店でバイトしながら、小説家になる夢を追いかけますが、
日々の暮らしに追われ、夢などどこかにいってしまいそうになっていくのです。
そんなエマをデックスが励ますのですが、その励まし方がとってもスウィート。
エマは、魅力的で賢いのにそれを活かしていないと言うのです。
「今、君に1つプレゼントするとしたら何だと思う?自信だよ。」
そんな素敵な言葉を言ってくれる男性の親友がいるって、うらやましいですね。
男性と女性の友情ってあるのかどうか。
よく議論されますが、どう思いますか?
まず、お互いに好意をもっていることは、間違いありません。
同性同士の友情だって、お互いを好きな事に変わりないのです。
では、何が違うのか。
やはり、
男女の関係になってしまうという危険性がある
というのが、一番やっかいな所です。
親友同士で楽しくすごしていても、男と女が二人きりで過ごしていれば、お互いに頭の片隅に危険性を感じていながら過ごしているはず。
その危険性を、ある意味うまく楽しみながら親友として付き合えるのなら、男女の友情も成立する気がします。
友人として話が合うし、とっても楽しく過ごせる男性がいたとします。
悩みでも何でも話せて、素の自分を見せられるホッとする存在です。
その男性と男女の関係になってしまったら、今までの友人としての良い関係性は、二度と戻ることはないのです。
それを覚悟の上、恋人になるのならいいのですが、恋人になったらいつか別れる時がくるかもしれません。
もし、別れた場合、親友も恋人も同時に失うことになるのです。
そのリスクを冒して、男女の関係になるか、淡い気持ちをおさえたまま親友として過ごすのか、悩むところですよね。
この映画のデックスとエマの場合、キスもしますし、同じベッドで眠るのですが、男女の関係だけにはならなかった。
長い期間、親友として過ごせたのは、エマの方が、デックスを心から愛していたからなのでしょう。
好意を持った男女が結ばれるというのは、結局は、タイミングなのでしょうか。
ただ一ついえるのは、大学の卒業式の夜、もし結ばれていたら、一晩の恋で終わっていただけの関係だったということです。
エマにとっては、素敵な思い出となりますが、デックスの方は、忘れてしまうかもしれません。
十数年かけたからこそ、成就した愛の形と言えます。
ちょっと気になる男性の親友がいるという方には是非観て欲しい映画です。
ちなみに、イギリス人の男性とお付き合いする際には、マザーグースの詩を何篇か暗記しておきましょう。もちろん原語で。
かならず役に立ちますよ。
画像出典:amazon
ロネ・シェルフィグ監督、ディヴィット・ニコルズ原作・脚本
「ワン・デイ 23年のラブストーリー」2011年公開作品