ひき逃げの犯人が自首をした。
その知らせを聞いてホッとしたのも束の間、逮捕されたという犯人は、その日、私たちが見かけた男だった。
紗希
「でも、どうやってこの写真を手に入れたの? まだニュースにもなってないのに」
記事のコピーを見つめながらつぶやくと、テーブルの向こうで真野さんが胸を張る。
真野
「バカにすんなよ。こう見えても、俺だってマスコミの人間だぜ?」
真野
「普段はゴシップばっかり狙っているが、こういう所にもちゃんとアンテナは張ってるさ。あ、いや……」
言ってしまってから照れたのか、新聞記事のコピーを手に取る。
真野
「……供述によると、多田悟志容疑者・36歳は、仕事の疲れからつい居眠りをしてしまい」
紗希
「青信号で横断中だった被害者、山口タキさん・77歳をはねて死亡させた疑い……か」
真野
「ああ、その記事自体はどこもおかしくないし、これで事件も解決なんだろうが……」
紗希
「……気になることでもあるの?」
真野
「加々美遥香と、この男の関係がちょっと気になってな」
真野
「スポンサーでもある旦那を怒らせてまで、パーティを抜け出したんだぜ?」
真野
「ふたりが特別な関係だったって考えるのが普通だろ?」
紗希
「付き合ってたのかな?」
真野
「正解。そう考えるのが自然だろうな」
真野さんがふっと笑顔を見せる。けれどその顔はすぐに真顔に戻った。