【芦屋道顕の夏の怪談】後編:「娘」として生まれ変わってきた「自殺した昔の彼女」の話

【芦屋道顕の夏の怪談】後編:「娘」として生まれ変わってきた「自殺した昔の彼女」の話

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さて、安産で生まれた玉のような娘は、元令嬢の妻のたっての願いで、自殺した昔の恋人の名に決まってしまった。しかし、男は女が自殺したとも知らぬゆえ、同じ名の娘を可愛がれば罪滅ぼしになるなどと、都合よく考えていた。

娘はすくすくと成長した。父親とも母親とも異なる、光に透けると輝く栗色の髪で、やがて目の下に小さなホクロが現れた。

そして、幼稚園に入る頃には、もうすっかり言葉も覚え、口達者でおしゃまな、普通のかわいい娘として皆から愛されていた。

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とりわけ、娘は父親が好きだった。

あるときのこと。幼稚園で娘は家族の絵を描かされた。娘は、大好きなパパとママ、そして笑顔の自分の姿らしきものを描いていた。

しかし、幼稚園の先生がふと気になって、彼女に聞いた。

「◎◎ちゃん、確か、お兄ちゃんがいるよね?」

すると、娘は答えた。

「いないよ。家族じゃないもの」

先生は、幼い子供のことだから、きっとお兄ちゃんにいじめらたり、お兄ちゃんのほうがかわいがられているように感じていたりするのだろうと、それですねているのだと解釈して、あまり気にしなかった。

しかし、もう一つ気になることがあった。

「◎◎ちゃん、ママの顔うまく描けてるね。……でも、ママってこの前先生も会ったけど、髪の毛って黒かったし、目の下にホクロってなかったよね」

すると、娘は顔をあげて先生の目をじっと見つめて答えた。

「これは、大人の◎◎ちゃん」

先生は、その娘が何を言っているのかよくわからなかった。

「ママじゃなくて、大人になった◎◎ちゃんなの?じゃあ、この絵にいるのは、パパと、◎◎ちゃんと、大人になった◎◎ちゃん?ママはどこに行っちゃったのかな?」

すると、娘は答えた。

「大人になったじゃなくて、大人だった◎◎ちゃん!こっちは、今の◎◎ちゃん!ママはいらないの!」

先生はさすがにこれは家庭に問題があるのかもしれないと考えた。そして、娘の親に報告をした。まず、元令嬢の母親は、その話を聞いても笑い飛ばした。

「うちの子はファザコンなんですよ」と。

そして、彼女も子供の頃、溺愛してくれる父親のほうが好きだったから、私に似たんでしょう、と話した。それを聞いて、先生も納得し、その「小さな兆候」は、父親である男の耳に入らないままとなった。

……それから数年後、男の妻は重病で入退院を繰り返すようになった。当然、家のこと、夫の世話がほとんどできない。

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ある日、男の妻は男と息子と娘が見舞いにきたときに、思わずこう言った。

「みんなの面倒をみてあげられなくてごめんね。絶対、早く良くなっておうち帰るから……。パパ、洗濯物とか大丈夫?お義母さんに任せっぱなしでごめんなさい……」

すると、娘はにこりと笑って答えた。

「心配しないで。パパのことは、私が全部やるから大丈夫。ママは、もう、ゆっくりしてればいいんだよ」

そのセリフを、気立ての良い男の妻は「なんてよくできた娘だろう。女の子はしっかりするのが早い」と、素直に受け止めた。

しかし、男はその言葉を聞いて、背筋がゾクッとした。小学校に上がり、少し大人びてきた娘。髪の色、ほくろ、それ以外もどことなく……いや、間違いなく「あの女」に似てきたのを、さすがにこの頃には感じていた。

そして、普段から、娘のファザコンなどという可愛いレベルではない、尋常ならざる己への執着にも気付いていた。

男はようやく、意を決してかつて捨てた女の消息を調べることにした。昔の遊び仲間を介して、それはすぐに分かった。

「彼女なら自殺したよ。○○年の……確か、○月○日だった」

その○月○日は、娘の誕生日だった。

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前編:遊び人だった男の昔の彼女が自殺。結婚後、死んだ女は「娘」として生まれ変わってきた【現代の呪】


 

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